廻音
それ故、其処に存在する彼は「当然」であり「自然」なのだ。

姉は狼狽えた。勿論、春陽さんだって。

それが「世間の常識」である筈だ。


しかし狼狽える暇など与えずに、彼は二人の前に降り立ち、春陽さんへの攻撃を開始する。

罵り、躰に危害を加え、殺意の限りを尽くしたのだ。
「大切な輪廻に的割りつく害虫駆除。」

それが彼の言い分だった。

純粋な恐怖に襲われ言葉も出ずにいる姉の前で、しかし一種の「愛情表現」として、彼は攻撃を続けた。

端から見れば、情けない程の嫉妬。
彼には「愛」以外の何物でもなかった。

誰かによる通報か、または巡回中だったのか、警察官の登場により、その場は「一時の決着」を迎える事となった。

そして姉の部屋へと取って返した二人にとって、それが別れの始まりだったのだ。
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