面倒臭がり屋の恋!?(仮)



『あの女が…勘違いもいい加減にしろって…。』

『それで、殺そうとしたんですか。』

『だって、勘違いするような事をしたのはそっちだろ!?俺は悪くない!』



善意が、屈折して間違ったものへと変化する事もある。

それを、この時私は初めて実感した。

私の善意を、自分への行為だと勘違いしたこの男のおかげで。


『理由がどうであれ、警察に連絡します。』

『っ、それだけは!…なぁ、池波、お前は俺の大事な後輩だ。お前だって分かるだろ!?俺の母親はっ――』

『心筋梗塞で入院していて、お金が必要。』

『…そうだ。俺は働かなきゃいけないんだ。こんなことで捕まって、人生ムダにしたくないんだよ!』


何それ。

さっきから、言ってることが自己中心的すぎじゃない?

小島にむかついたのは、彼も同じだった。


『“こんなこと”って、何ですか。』

『っ…、』

『アンタの言う“こんなこと”で志葉先輩は殺されそうになったんだ。傷ついたんだよ!アンタも大人だろ?自分の責任くらい、自分で取れ。とにかく、このことはちゃんと警察に連絡する。』


そう言って、携帯で110番する池波くんの背中は、とても後輩だとは思えないくらい、凛々しかった。




< 68 / 91 >

この作品をシェア

pagetop