面倒臭がり屋の恋!?(仮)
『あの女が…勘違いもいい加減にしろって…。』
『それで、殺そうとしたんですか。』
『だって、勘違いするような事をしたのはそっちだろ!?俺は悪くない!』
善意が、屈折して間違ったものへと変化する事もある。
それを、この時私は初めて実感した。
私の善意を、自分への行為だと勘違いしたこの男のおかげで。
『理由がどうであれ、警察に連絡します。』
『っ、それだけは!…なぁ、池波、お前は俺の大事な後輩だ。お前だって分かるだろ!?俺の母親はっ――』
『心筋梗塞で入院していて、お金が必要。』
『…そうだ。俺は働かなきゃいけないんだ。こんなことで捕まって、人生ムダにしたくないんだよ!』
何それ。
さっきから、言ってることが自己中心的すぎじゃない?
小島にむかついたのは、彼も同じだった。
『“こんなこと”って、何ですか。』
『っ…、』
『アンタの言う“こんなこと”で志葉先輩は殺されそうになったんだ。傷ついたんだよ!アンタも大人だろ?自分の責任くらい、自分で取れ。とにかく、このことはちゃんと警察に連絡する。』
そう言って、携帯で110番する池波くんの背中は、とても後輩だとは思えないくらい、凛々しかった。