金糸雀(カナリア) ー the Mule in a cage -
男爵家の美人姉妹、といえば二人のこと以外にない、二十年前の社交界では知らない者はいなかった。

透き通るような肌、彫刻の聖女を思わせる顔立ち、折れそうに細い腰……。
笑顔はバラが開いたよう、声は小鳥が優しくさえずるよう、と会った者は皆二人を褒め称えた。

そんな二人であったが、成人してからの運命は正反対のものとなる。
姉はアトウェル侯爵へ嫁いでエミーユを産むと、産後の肥立ちが悪く亡くなってしまったのであった。
一方妹は、「成り上がりの」ブロジュ伯爵のもとへ行き、マリアを産んだ。姉が身罷って以来、もともと目立つことが好きでなかった彼女は、派手な催し物にほとんど姿を見せることはなくなった。伯爵家の広大な屋敷で刺繍をしたり絵を描いたりして静かに暮らしている。最初は嫌がっていたマリアの父との結婚も、彼女にとっては好転したようだ。他の貴族の女性と違い、若い愛人を持つこともなく、商売で何日も屋敷を空ける忙しい夫が帰宅すると、二人寄り添って広大な屋敷の庭や森を散策する仲睦まじい姿を、使用人たちは何度も目にしている。

「色々とご事情があるのです、エミーユさまには」

ジャムスは、一言ひとことをかみしめるように、マリアに告げた。

「そのうち健康になられます……きっと」

こう言いながらジャムスは祈っているのだわ、マリアは思った。

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