エトセトラエトセトラ
彼女は好奇心の権化のようなひとだった。好きだと思ったものはとことん極める。そういうひとだった。時計をたくさん持っているのも、そういった性格から来ているのだと僕は知っていた。
だからだろう。次の日彼女が僕の家へやってきたときにはすでに、落下タイマーはほとんど真上を向いた状態に変化していた。好奇心に駆られた彼女が昨日のうちにあれやこれやと落下タイマーを調べつくしたのだろうと僕は推測し、その推測は完璧なまでに当たっていた。
「わかったわ」
部屋に入るなり彼女はそう言って僕の目の前にずい、と落下タイマーをかかげてみせた。
「この時計が溜めているのは、"落下"よ」
「なに?」
彼女の言葉がよく聞き取れなくて、僕は聞き返した。
「"落下"。何かを落とすたびに、それがこの時計に蓄積されていくのよ」
自信満々に彼女はそう言い切った。
そんな彼女になんて答えたらいいのかわからなくて、僕はとりあえず彼女をソファに座るよう勧めた。
「確信があるの?」
ソファに腰を下ろしながら僕が聞いた。
研究成果を否定して彼女を傷つけたりしないように、言葉を選んで。