‐彼と彼女の恋物語‐



「コトの部屋はここね、荷物は適当に詰めちゃっていいから」



品の良いクローゼットを示しながらも、まぁすぐに終わるよね。なんて言って寂しげな段ボールを見つめる彼。が、すぐに何かを含むイヤらしい笑みに変わる。



「荷物の整理…手伝う?」

「いや、少ないですし」

「そっちじゃなくて、……片付けてるときに下着とか出てきたら」

「……結構です。荷物運んでくれてありがとうございました」

「なんか困ったことあったら言ってね、すぐ来るから、下着見に。」

「………もういいです」



残念。と全く思ってなさそうなことを言った彼はリビングにいるね、と話声につられて来た白猫を抱いてそこから姿を消した。


ひとり、清潔感の漂う部屋に残された彼女は短い息をはくと手早く物を片付け始める。



物は本当に少なく、大きなクローゼットは有り余る。



が、そんなことよりも彼女の脳内を占めることは先ほどの彼の言葉である。



―――「夫婦は一緒に寝んの」



何気なく発せられた“夫婦”と言う言葉に、なぜか照れてしまう。今更ながらに頬が熱くなってしまう。



「………(ずっと、一緒)」



もう用のなくなった段ボールを壁に立て掛けた彼女は持ち上がる口角をなんとかコントロールしつつ、無性に触れたくなった彼の元へと足を向けた。



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