エゴイストよ、赦せ
そういえば、僕と三鷹がこうやって、ふたりだけで酒を飲むのは初めてだ。

他の同僚たちと一緒のときよりも、あきらかに飲むペースが速い。

酒の強さまで隠していたなんて、とても彼らしいと思う。


「それにしても、近すぎる」


天井にぶら下がっている電球を指差して三鷹は言った。


「二階も客席になってるからね。二階というかロフトかな?」


「レトロな雰囲気を、とか謳ってるけど、この設計は客席数を多くするためだろうな」 


外国の古い港町の居酒屋――それがイメージコンセプトらしく、手作り風のイスやテーブルなどを始め、個室のドアや床、壁などの内装はすべて木材が使用されている。

バーカウンター内に、大きな酒樽と宝箱が目立つように設置されているのが印象的だった。

大人数用のテーブルがいくつかあるメインフロアの天井には、布製の大きな海洋図が吊りされらていて、この店のシンボル的存在となっているようだ。


「リピーター率は低そうだな。狙ってるイメージに反して居心地が良くない」


「通路も狭いし、店全体に圧迫感があるよね。ここは使えないか……」


僕のその言葉に、三鷹は目を大きく見開いてから、ニヤニヤと笑い出した。
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