エゴイストよ、赦せ
ローサの顔が思い浮かんで少しためらう。


否、もう大丈夫だ。

二度と忘れない。


大きな目が三日月形になるあの笑顔や、揺れていた綺麗な髪の色、やさしい香り、僕を呼ぶやわらかな声。

その温もりを。


僕はバッグからグレーのハンカチを取り出し、彼女に差し出した。


「大丈夫?」




僕はどうやら、エゴイストで。

たとえば、大切なひとが笑っていてくれるなら嬉しいけれど、それが僕によってのものならば、もっと嬉しいと思ってしまう。

僕と一緒にいるときの笑顔が、そのひとの一番の笑顔なら良いのに、と思ってしまう。


憶えておこうと思うんだ。

三鷹が言ったことを。

誰かのためだと口にすることは簡単だ。

けれど、ときにはそれは、自分を正当化する理由になるだろう。

ときにはそれは、自分の感情を押しつけることになるだろう。


だから僕は、自分はエゴイストである、と心に刻んでおこう。 


許して欲しいと思う。

エゴイストであることを――。



< 126 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop