エゴイストよ、赦せ




僕は公園のベンチの近くで、煙草に火を点けた。


空に吸い込まれ溶けていく煙草の煙を目で追う。

白い雲がふわりふわり、ゆっくりと流れている。

ローサの吸う煙草の煙も、こうやって空に溶けているのだろうか。

どこかでふたりの煙が出会うのなら嬉しい、と思う。


ねえ、ローサ。

僕は今、上手く笑えてるかな? 

あの頃よりも、良い顔で笑えているのかな? 


願わくば、彼女が僕のマフラーを首に巻いていないことを祈る。

僕のマフラーよりも、もっとずっと温かい誰かの想いを、彼女が纏っていることを願う。 


風。


一瞬の。 


空を見上げていた瞳が、それを捉えた。


僕は右手を差し出し、それを受け取る。


いったいどこから? もう散ってしまっているはずなのに。


辺りを見まわすが、わからない。


掌にはひとひらの桜の花びら。


不思議な温もりを感じた。


僕はもう一度、空を仰ぎ見る。


ローサが微笑んでくれたような気がした。


掌の上を見ると、


花びらは消えていた。


彼女の魔法だ、きっと。


「生きていると思っていれば悲しくはない、か」


僕はひとりごちた。
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