素直じゃないあたしを温めて
「黙って聞いて居れば勝手な事を……」
「違うの、航太!いつから……居たの?」
「最初から。茂里が出てから亜衣が話しかけたの、部屋から丸聞こえ。それから気になって部屋から出て、黙って聞いてた」
「じゃあ、私の気持ちも……」
亜衣さんがそう言うと、柳瀬は何も言わずに
「茂里、帰るぞ」
「えっ?」
いきなりあたしの手を引っ張ってそう言った。
「ちょっと、航太っ!」
亜衣さんのそんな声も無視して、階段を降りて行った。
「柳瀬……?」
柳瀬の顔は無表情で、でも怒った様にも見えた。
「あ。樹理、拓未くん。俺ら帰るけど二人どうする?」
一階に居た二人にそう声を掛けると、
「どうしたんですか急に?!」
「まだ此処に居るなら明日悪いけど電車で帰ってもらいたい」
「えー電車ぁ?じゃあ私も帰ろっと」
新山さんはそう言って荷物を持ってこっちに走って来た。
「じゃあ俺もそうします!」
「ちょっと、どうしたの!?」
と、幸子さんが焦った表情でこっちに来た。
「俺、帰るから」
「まだゆっくりして行けば……」
「良い。此処に居たら余計な事言われるからな」
柳瀬はそう言うと、二階に居る亜衣さんを睨んだ。
「柳瀬、もう良いって……」
あたしが小さくそう言うと、
「行くぞ」
あたしの手を引っ張り、あたしの荷物と柳瀬の荷物を持って外に出た。