素直じゃないあたしを温めて

帰りの車の中では、誰も喋らずただ沈黙が流れていた。



拓未くんも新山さんも、

何も聞いてこないけれどたぶん、分かってるんだと思う。


悪い事しちゃったかな……




「ごめんね、色々振り回しちゃって……明日またバイトで」


「大丈夫だって!気にすんなっ!おう、じゃあな」


「ありがとう、じゃあね」



そう言って拓未くんと新山さんに手を振り、あたし達は柳瀬のマンションに帰った。







「不安か……?」


「え?」



部屋に入って二人きりになるとすぐに、あたしの目を真っ直ぐ見た柳瀬。


その目が、あたしの中のぐちゃぐちゃな心を見透かされているような気がして、すぐに目を逸らしてしまった。



「亜衣の言った事……信じるのか?」


「……」


「俺の気持ちは……勘違いなんかじゃないから」



そう言ってくれて、嬉しいし、安心する。



けど、今のあたしの心が支配されているのは……

それじゃない。
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