レミリアの一夜物語
家から追い出されたレシェフは心配や不安を来た道に向けつつも、どうしようもなくラクダを連れて砂漠に繰り出して行った。
とはいえ、何かをする気力もない。
本当は家に居たくて、彼女のそばにいてやりたくて仕方がなかったが、他でもない彼女自身がそれを拒絶した。
理屈はわかる。納得もしている。だがそれと感情は別物だ。
彼女が自分の命を食い荒らす魔力と必死に対抗しながら全てを賭けようとしている。
そして、最悪の結果になったとき、自分だけでも無事でいてほしいと、それだけを想ってのことだとも知っている。
「ネイト……オシリス」
レシェフにとって、今最も大事な二人の名前を呟く。
その二人は、レシェフが帰ったとき、この世から存在を跡形もなく消し去ってしまっているかもしれなかった。
ネイトは強い。それはレシェフが一番知っている。……だからこそ、今の状況があるわけだが。
夜も更けて、望月の星空が完成した。
いつになく巨大な月がレシェフを照らす。
そして目を空から砂漠に向けると、月が砂漠に落ちていた。
レシェフが目を離したほんの一瞬の間に、月と同じ光が砂漠に落ちている。
いぶかしんで近づくと、まるで苦痛に耐えるようにうずくまる青年が発光しながらそこにいた。
レシェフは自分に再び訪れた縁を、半ば嫌そうに、半ば呆れたように迎えた。
「お前は、ずっとそこで寝転んでいたいか?嫌なら自力で立ってラクダに乗ってくれ。さすがにお前は持ち上げられない」
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