魔王更生物語 -させてみせます、その男!-
放課後、私は特にすることもなく、でもやつらが結界をはったら厄介なので適当に問題集解いたり読書したりしながら時間を潰している。


屋上での出来事があってから一ヶ月が経った。


私は間違っているのか。


まさか、更生させると張り切っていたその月に、ここまで挫けそうになるなんて思わなかった。ユイちゃんとは普通に話すけど、それとなくあっちの話に持っていこうとすると、
分かっていたかのようにのらりくらりとかわしてしまう。


聞くな、ということなんだろうな。私は自嘲気味に笑った。あれから神城に説教するんだと走り回っていない。


見かけない、というのもあるけれど、私が結界の場所に駆けつけた頃にはすでに居なくなっている。ぜはぜはと咳き込むトキくんやユイちゃん、それと七海さん側の配下を残して。


「また、だ……」


苦しそうに喘ぐトキくんに、最近常備するようになった水筒を渡しながら、呟いた。日が経つにつれて結界がはられる回数は増えていて、だけど神城には会えない。


かわりに、疲れきって倒れている配下たちが残ってるだけ。


「いつも、どんな戦いしてんのよ……」


無意識に出ていた言葉に、ぴくりと腕の中のトキくんが反応した。うっすらと目を開けて、もう大丈夫と私の腕を抜け出す。


「…知らなかったんですか?」


「う、うん。来たときはいっつも終わっていて…」


戸惑いながら答えつつ、ああ私は本当に何にも知らないんだ。と思った。


たしかに、これでは神城に怒られて当然だ。何も知らないくせに、知った気になって説教
してまわる。


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