Mail
過去
 教師はいろいろと忙しいらしい。詩季は特に、1年生の副担任になったらしく、行事や何やらで余計に忙しいらしい。
 学校は毎日あるから、メールも朝早くか、休み時間の間か、放課後だ。『今はそれでも落ち着いたよ。春休みの宿題も作り終わったし。』
『春休みか……。懐かしいです。次は授業ですか?』
『次の時間はないよ。だからまだメールできます』
 詩季はいつも学校の事を話してくれる。
 その日あったこととか、職員室の内部事情とか。
『詩季は、どうしてあたしが学校やめたのかとか聞かないんですか』
 ややあって返事がきた。
『話したくないことかもしれないし。話したくないことを無理に聞くわけにいかないよ。それに、もし櫻が話したくなったら自分から言うだろうし』
 教師をやっているからだろうか。あたしくらいの子供の扱い方をわかってる感じだ。
 適当にあしらうわけでもなく、必死に追求するわけでもなく。
『じゃぁ、今日家帰ってからでいいから、メールください』
『わかった』
 なんでか、思い出したくもないはずの過去を話してみようかと思えた。
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