泡沫眼角-ウタカタメカド-
一人が行方不明になったという大きな抗争があったのが八年前。
その年の元日から地方記事を見ていく。

言乃は別の新聞を、同じように見ていく。

地方記事を開いては隅々まで確認し、比津次会や禅在組の文字を探す。


「うーん…なかなか見つからないね」

夏あたりに差し掛かったところで、恵は大きく伸びをした。
集中して見ていくのは、どうにも肩や目が疲れる。

【恵ちゃん、見て下さい】

言われて覗き込むと、住宅街近くの廃工場付近で何かが起きたと通報。
警察が急行すると、既に誰もいなかったという記事だ。

「おお! なんかぽいよ!!」

疲れていた恵の気持ちが一気に上がる。
言乃も頷き、ファイルをめくる。

【その先を見ていくと、何か大人数での騒ぎがあったのは確からしいのですが、警察はそれが何か突き止められていません】

「…本当かな?」

【わかりません。しかし、これで暴力団を挙げるには証拠が無さすぎる気もします】

「わかっていても、手が出せなかったってこと?」

【そうかもしれません】


言乃はその記事をコピーしに席を立った。

恵はもう一度、自分のファイルに向き直る。


――絶対に手がかりを見つけるんだ!


そして、ページを大きくめくった。


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