泡沫眼角-ウタカタメカド-
隣の家の塀は高いというのに、それを越えて木の枝に引っかかった炯斗のサッカーボール。
家から持ち出した台と、自分の家の木とで、ようやく塀の高さまでやってくる。
次はその向こうにある木に移ろうと手を伸ばしたその時に──
「コラッ‼ 何やってるクソガキ‼」
「うわ、やべっ見つかった!」
怖そうに顔を真っ赤にしたおっさんにいきなり怒鳴られ、飛び上がった炯斗。
一瞬目を下に向けたことで、掴もうとしていた枝を目の前に手は空をつかんで体はグラリと傾いた。
ヤバい、そう思ったのも一瞬。
「う、うわああああああああああああああっ‼」
頭から炯斗は地面へ落ちる。
自分の身長の倍くらいの高さからは落ちるのも一瞬。
気が付けば前転の要領でコロン、と大地との衝突は避ける。
それでも最初についた手は細かい石を相手に全体重をかけたのだ。
食い込んだ石の後や擦りむいた傷がジンジンヒリヒリと痛み出していた。
「い、痛てて…」
「ば、ばか! あんくらいで落ちるんじゃねえよ!」
両手から目を上げれば、炯斗に怒鳴りつけたおっさんがさっきとは逆で顔を青ざめさせていた。
「あー、おっちゃんゴメン! あれ取りたくてさ!」
「ん?」
上の木を見上げた隙、炯斗は即座に目の前にある脛めがけて思いっきり蹴った。
「いってええ‼」
「べーだ! お前が大声あげなきゃボール取れたのによ!」