嘘つきヴァンパイア様
「あぁ、あいつらは狐とトラの神だ。任務中に人間に手出すと言う大罪を犯し、ここに来た。あんな厳ついなりだが、根はいい奴らだと俺は思う。現に俺の言うことは聞くし、頼りになる。任務に出しても、人間に手は絶対に出さない。口にはしないが、手を出したのは理由があるんだろな。事実を言えば俺が元の界に戻してやるって言っているのに、ここに居座っている。馬鹿な奴らだ」
呉羽の真面目な言葉に涼子は少し「意外」だと思った。呉羽は王、だけどその言葉は王のものではない。
王ならば、罪人は罪人。解放するなど考えもしないだろう。その罪が大罪なら、なおさら。
けれども、「理由がある」など…。良い言い方をすれば、優しい。悪く言えば甘い。
それに、「馬鹿な奴ら」と豪語するわりに表情は穏やか。心なし、少し笑っている。
見たことのない…いや、忘れている呉羽を見た気が、涼子はした。
.