嘘つきヴァンパイア様
「…ふふ」
「何、笑ってるんだよ」
無意識に笑っていたのか、笑みを零すと、呉羽はムッと口元を引き締める。
「あ、ううん。呉羽って、あの神様達が好きなんだなって、思っただけ」
「…え?」
「優しいんだね。呉羽様は」
わざとらしく「様」など付けて言う。すると呉羽は数秒黙りこんだ。なにを言っているんだ、この女はと言わんばかりに涼子を見つめる。
けれど、怒っている顔ではない。
すると、呉羽は深々と溜め息をはき、涼子から離れた。
「なんか、萎えた」
くるりと、身体の向きをかえ「仕事に戻る」と呟き呉羽は少し怒ったように渡り廊下を歩いて行ってしまった。
照れているんだろうか。その背中からはよく感情はわからない。けど、涼子はその背中を見えなくなるまで見つめていた。
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