嘘つきヴァンパイア様
「ねぇ、呉羽?」
「ん?」
少しだけ、身体を起こし、彼女は呉羽の手を握りそっと自分の頬に添える。
「わたし、頑張って……呉羽とのこと、思いだすね。呉羽が私を大切にしてくれるから、頑張れる。時間は、かかるかもしれないけど……呉羽の思いに答えたい。少しだけ、だけど、思い出せて、本当に良かった」
呉羽の手にそっと、キスをし「ありがとう」と言う。
すると呉羽の手は涼子の耳を掠め、そのまま頭の裏に回った。受け入れるように瞳を閉じれば、呉羽の熱い唇が涼子の唇と重なった。
唇を舐められ、少し開いた隙間から呉羽の熱が入ってくる。生暖かくて、蠢く柔らかいような固い感触を彼女は受け入れた。
呉羽との、キスは何回目になるのだろう。記憶がなくなった際は受け入れるだけで精一杯だった。
やり方を教わっても、羞恥心からか涼子から攻めることなど、ない。
(…でも、今日は……呉羽に答えたい。恥ずかしいけれど……)
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