嘘つきヴァンパイア様


「…そうですが。わかりました」


そのままユノは呉羽の横を横切り、その場をあとにした。



残された呉羽はしばらく、そこから動かない。



そして、涼子のことを思いだし、唇に指をそえた。


(…あのとき、俺はなにを考えていたんだろう)



城下で涼子にキスをしたこと。あれは、呉羽が涼子に取り入るためにしたものではない。



あのキスは呉羽がしたいと思ったものだった。



真っ直ぐに呉羽を見つめる涼子。そんな涼子をみて、呉羽はキスをすることが止まらなかったのだ。


「おかしいな…俺」


そのまま、いつものように唇を抜くおうとするもの、呉羽は何故かそれができなかった。




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