嘘つきヴァンパイア様
「なんだよ、その反応。全部嘘だったんだ。噛み殺すなんて言われてまで、なんで黙っている。泣き叫んで、怒り狂うかと思ったんだけど?」
確かに、呉羽の言うとおり、涼子は異様に冷静である。涙を零すことも、声を荒げることもない。
ただ、呉羽の言葉を聞き、顔をあげ呟く。
「うん……どうしてだろうね」
「俺に聞くな。知るわけがないだろ」
「知っているよ。けど、私はその知らない答えが、なにか知っている」
涼子の意味深な言葉に呉羽は不機嫌そうに「は?」と声を漏らす。その言葉を聞き涼子は再び俯き顔を反らす。
「でも、その理由は言いたくない。呉羽には、言えない」
「……あっそ。こうなった以上、聞かなくてもいいさ。聞く必要もない」
沈黙が訪れた。長い、長い沈黙。
どちらも口を開こうとせず、黙っていれば耐えかねた呉羽が涼子の腕を掴んだ。
爪が肌に食い込むほどの力に涼子が呉羽を見上げた。
「行くぞ。今日からお前は屋敷の地下に匿う。ばれた以上、優しくはしない。逃げ出されたら困るからな」
「逃げ出すって……そんなこと、しない。だいたい、逃げ出してどうすればいいの?私は、ここから人間界に帰る術を知らないんだから……」
「あたりまえだ。教えなかったんだからな。こうなった時もためにも。それより、もう口を開くな。黙って、ついてこい」
それから呉羽は涼子の腕をひき、屋敷に戻った。その間、呉羽も涼子も口を開くことはなかった。
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