嘘つきヴァンパイア様
ギュウと力強い腕にフワッと香る甘いいい香り。一瞬、何が起きたか理解出来なかったが、そんなのはすぐに理解出来た。
何故、抱きしめられているのだろう。
「あ、の…」
サラッと頬を掠める髪の毛と温もりに恥ずかしくなり、そっと男の腕を触ると男はゆっくり離れ彼女の肩に手を起きコツンと額を合わせてきた。
「良かった。目が覚めて。本気で心配したんだぞ」
頬を片手で弄るように触れ、口元を優しく微笑ませる。至近距離で見つめられ頬を染めあげながら頬にあった手を引き離し男をみた。
「あの、なにを…ひ、人違いです…」
「え?」
「だ、誰かと、間違えてませんか?」
まさか、昨日あったよくわからない人を心配するようなお人好しなどいないだろう。単純に浮かんだ言葉を述べれば男は眉間にシワをよせた。
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