嘘つきヴァンパイア様
「…あ」
ドアをあけたまま、その場で立ち止まりブラウンの瞳を大きく開きながら、涼子を瞬き一つせずに見つめる。片手にはコンビニの袋が握られていた。
「…え、えっ?」
その人物、見覚えがあった。バックを拾ってくれた彼、そして横断歩道で私を見つめていた彼だ。
看護婦が言っていた彼とは彼のことか、そう彼女は思い、ただ見ていると男は急ぎ足で目の前にたつ。
「涼子?」
震えながら呼ばれた名前。なぜ、名前を知っているのだろう。名乗った覚えはない。
何が何が理解なんてする事は出来なく、男を見上げ首を傾げる。
「え、えっと、あの…」
「涼子っ」
「え…きゃっ」
ガサッとコンビニの袋が落ちる音と同時に近づいて来た男に体を引き寄せられ意味の分からないまま広く暖かい胸に抱き締められた。
・