嘘つきヴァンパイア様



ただ、じっと見つめる。瞬きさえもせず呉羽を見れば、彼は苛立ちを覚えたかのように涼子に近づく。

「なんだよ…その目」

「なんでも…ない、よ」

「……あっそ」

「…うん…」

(私は…おかしい。こんなにも冷たく乱暴にされているのに…呉羽を見ると…愛しさしか浮かんでこない)


このところ、抱かれるのは苦痛だけれど、どこか心のどこかで呉羽と傍にいられるのが少し嬉しかった。


けれども、それは口には出来ない。だって呉羽は…涼子のことが嫌いだのだから。それを分かっているからこそ、こうやって見つめるだけしか出来ない。

言ってはいけない。きっとその言葉は呉羽を激怒させ、苦しめるから…。


(私はおかしい…どうしてこんなにも呉羽が好きなんだろう…沢山の嘘をつかれ、乱暴され、投獄されている。それなのに…思いだすのは呉羽と過ごした時間)



(私は…彼を憎めない。恨めない。その思いが、いま、私をここにとどめ、この屈辱を愛しいと思っている。私はきっと…呉羽を狂わしいほど…愛している)




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