嘘つきヴァンパイア様
『…しあ…わ…せ…に?』
抱え込んだ身体を起こし、そこ声が聞こえるほうを見上げれば、ぼんやりと光が見えた。
『涼子…あなたなら…彼を…引き留めることが出来る…きっと…そう信じているわ…だから…お願い』
『あなたは…カトレア…さま?』
前にも…涼子は同じようなことを言われていた。あの時は夢に出てきてすぐに消えてしまった。
(また…同じことを言うの?)
『わたしは…』
『大丈夫よ。貴女なら…出来るから』
光に手を伸ばした。その時、そっと何かが涼子の手を掴む。とても暖かい感触。身体の奥から優しさがあふれ出てくるような温もりに、涼子はそっと目を閉じる。
『彼を…とめて』
『…わた…し…は』
『お願い。貴女なら…出来るから』
(わたしは…)
意識が重くまどろんでいく。暖かい光に包まれ、その身を委ねた。その時には、もう声は聞こえなかった。
光も見えなくなり、再び暗闇の中に吸い込まれていく。
(このまま…私はどこにいくのだろう)
頭のうしろが重たくなり、その重さに負けて、体はゆっくりと宙返りし、さかさまになって、深い眠りの海へ沈んでいく。
(このまま奥深くまで…行けば…なにがあるんだろう)
もう、どうでもよかった。沈んでいく感覚に身をていせば「涼子様」と、呼ぶ声が頭の中で拡声器のようによく響いた。
(この声は…レシィ…?)
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