嘘つきヴァンパイア様
(この手…)
この手の正体が誰なのか、涼子には直ぐに分かった。
何回も、この手に触れ、触れられた。
そっと、涼子はその主を確認するかのように瞼を開ける。
ぼやける視界の中、はっきとその姿は見えた。
「くれ…は?」
そこにいたのは、愛しくて、大好きな呉羽。
涼子の姿を見下ろし、視線が打つかると彼はあの時と同じように冷たい視線で見下ろしている。
「声が聞こえた…から」
「……ぇ?」
「苦しんでる、声が」
(わたしの声が…聞こえたから、来て、くれたの?)
嬉しかった。あんなに酷い目に合わされたと言うのに、涼子には額に触れる手が何故かとても、嬉しかった。
「ユノの薬、飲んだのか?」
ベッドのサイドテーブルに置かれた薬と水を一目みて、ひと息はく。
「ご飯も、食べてない。そんなんじゃ、子供が産めないと、何回言えば分かるんだよ」
額から手を離し、そのまま背を向け部屋を出て行こうとする。
離れた温もりが、異様に切なく力無い手を伸ばし、涼子は呉羽の袖を摘んだ。
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