嘘つきヴァンパイア様
「ま、まって…」
「……なに?」
出ていく足がとまり、呉羽は視線だけを涼子に向けた。
冷たい視線、あの時と同じ。涼子が呉羽に嘘だったの?そう、問いかけた時と同じ顔。
怖い視線。顔を逸らしたかった。けれども、涼子は呉羽を真っ直ぐと見つめる。
「いか…ないで」
「……」
「お願い…しま、す。そばに…いて」
力無い声。弱々しく、どんな小さな物音で聞こえなくなってしまいそうな声だが、呉羽にはその声がはっきりと聞こえていた。
「なんで、俺が。レシィに頼めばいいだろ。俺はただ、子供を産む女が生きているか確認しに来ただけだ。何も食べないで、苦しむ奴の言うこと聞く理由はない。いや、それ以前に、抱く以外の事で、お前のそばにいる意味だってない」
乱暴に涼子の手を振り払い、そのまま歩きだす。
(あ……)
遠ざかる背中。
(いやだ…いやだ…よ)
「呉羽…まっ…あっ…!」
振り払われた手を再度伸ばすと、ふらついた身体でバランスを崩し、そのまま勢いよく、転落してしまった。
「い、たっ…い」
身体の全部に痛みにが走り、自力で起き上がることは出来ない。
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