嘘つきヴァンパイア様


抱きしめてくれるなんて、思ってもいなかった。

見放され、レシィが来るまで我慢をしなくてはいけない。そう、思っていたのに。


「呉羽…っ」

「世話がやける女だ」


言葉とは裏腹に、涼子を抱きしめる呉羽の腕はとても優しい。

まるで、初めて赤子に触れるかのように涼子の身体を抱いて居る。

(やっぱり…呉羽はあたたかい…)


こぼれ落ちる涙を指で撫でると、呉羽は同じように涼子の涙を拭った。


どうして、だろう。さっきまで、あんなに苦しくて辛かったのに呉羽に抱かれた瞬間、嘘のように苦しさが消えていく。


熱かった体温も引いていく気がして、残るのは胸の奥の暖かさだけ。


そんな涼子の表情を呉羽はそっと、覗き見る。


「なんで、そんな顔が出来るんだよ」

「………え?」

「そんな、落ち着いた顔して、こうされるのが嬉しいみたいじゃねぇか。俺が、お前に何をして、これから、何をするのか忘れたのか?」

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