嘘つきヴァンパイア様
ユノの促しに、向けた視線を再び月に戻すと彼は涼子に近付き、肩に羽織をそっとかけた。
「体調も回復したばかりです。それに、もしや子供がいるかもしれません。冷えはお身体に触ります」
「あ、はい。ごめんなさい…」
掛けられた羽織りに手を通し、手を通しまた、月を眺めればユノは首をかしげる。
「先ほどから、月に魅入られているようですが、なにか気になることでも?」
「そうじゃないんだけど…ただ、なんとなくといいますか…理由とかはないんです」
そう言い、枷のつけられた足を引きずりながら歩くとその背後をユノも歩く。
「そうですか。それより、涼子様」
「はい?」
「お部屋に戻られる前に、呉羽様の執務室にお向かい下さい」
どうして?そう、返答すればユノは更に続ける。
「なぜ…それは、そういう事でしょう。呉羽様がお待ちです。待たせることのないようにお急ぎください」
「……」
(なるほど。そう言うことね)
「わかりました」
頭を軽くさげ、涼子は急ぎ足で呉羽のもとにむかった。

