嘘つきヴァンパイア様


「本当の事だ。俺の生まれた場所は天国より遠いんだ」


「天国なんて行ったことないのに?」

「あるけど」

「もう!嘘つき!」


呉羽の手を軽く振り払い"ご飯、冷めますよ"
と言うと彼は"嘘じゃないからと、再び料理を口にする。


「で、来る気はある?」


「それ、いつの予定?」

「明日」

「明日か…って、あした!?」


思わず手から箸が滑り落ち、それを呉羽が拾い涼子に渡す。

「そう。まぁ、元々の約束だったんだけど…こんな事になって黙っていたけど」

「そう、なんだ…」

呉羽が差し出した箸を受け取り彼女は考える。

元々の約束と言われたら何も言えないからだ。気を使って言わなかったのだろうと、思うと彼女の良心は酷く痛んだ。

「そっか、明日…ね」

「無理するなよ。仕方がないから、やめ」


「分かった。行こうかな」」


呉羽の言葉を遮れば彼は少し驚いたように"いいのか?"と、涼子をみた。


「うん。だそれが約束だったのなら守らないと。それに、何処か行けば思いだすかもしれないですし」

「なるほど。なんか、悪いな」

「ううん、全然」





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