嘘つきヴァンパイア様
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その日の深夜。静まり帰ったある部屋に腰ほどの長さがある栗色の髪の毛を静かなそよ風になびかせる。
ダークブラウンの瞳を細め、部屋全体を見渡すと床で倒れビクリともしない少女に近づく。そして、その身体を腕に抱くと囁くように声をだす。
「アナ、目を覚ましなさい。全く…可哀想に…眠らさせられて」
乱れた髪の毛を撫でる。するとその少女は重い瞳をゆっくりと開いた。ぼやける視界でゆっくりとした瞬きを数回繰り替えし目の前の人物をみた。そして、その瞳が大きく開かれる。
「…あ」
「おはよう。アナ」
「ギルド…様…?」
「あぁ、油断したね。すっかり眠らされて」
ギルドと呼ばれた男の声に少女…いや、涼子の友人の楓は慌ててギルドから離れる。事の状況を即座に理解し勢いよく頭を下げた。
「も、申し訳ありません!ギルド様!わ、わたくしは…わたくしは…っ」
「いいよ。アナはよく使命を果たしてくれたよ。彼女の友人になり…今まで守ってくれたのだから。それに呉羽のことも…すぐに報告してくれた。ヤツの計画にのったことも感謝してる。連れて行く手間が省けた。感謝する」
「も、勿体なき御言葉です。あの…ですが…涼子は呉羽様に…」
「あぁ。眠らされて連れていかれた」
「…そんな…っ」
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