嘘つきヴァンパイア様
「その質問には答えかねます」
「え、どうしてですか?」
「涼子様には余計な事は言うなと念を押されていますので」
「誰にそんな事を?」
「答えかねます」
「…」
このレシィと言う女性は何も言う気はないんだ。そう涼子は思いため息を吐く。
「わかりました。えっと、じゃあ呉羽はどこにいるの?」
意識が飛ぶ前まで呉羽といたのだから、何か知っているかもしれない。僅かな期待を胸に聞けばレシィは再び黙り込み首を左右にふる。それは「いえない」ことを意味した。
うな垂れる涼子に対しレシィは無表情のまま涼子を眺める。
「そ、そう…」
この人…美人なのに無愛想。
愛想笑いもしないレシィとの時間は彼女には耐え難く、いっそ部屋から飛び出してしまおうか。なんて、よかならぬ事を考えれば不意に部屋のドアが叩かれた。
音に惹かれるように涼子とレシィが同時にドアの方向を見る。するとそこには腰ほどの黒い髪をした男性の姿。
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