黒水晶


一方イサは、カーティスのいる剣術道場にやってきた。

カーティスはいつものように汗を流し、必死に稽古をしている。


イサは、夕焼けが差し込む道場に、ゆっくり足を踏み入れた。

カーティスはすぐさまイサに気づき、稽古の手を止める。

「イサ様…………」

「カーティス。

俺がここに来た理由、察してくれるよな…?」

“ええ、もちろんです…………”

声に出さず、カーティスは視線の色で返事した。


カーティスは、ヴォルグレイトについて知っていることを全て、イサに話した。

イサがフェルトから聞いた話は、本当だった。


「イサ様…………」

カーティスは、涙を流すイサの背中を優しくなでさすった。

「とう…さん……」


イサの胸には、呼吸もままならないほどの苦しさが溢れた。

フェルト視点の真相を聞いた時以上に……。


父親に対する、

怒り、

失望、

同情。

母·ルナの死が全ての始まりだったのだと知った。


「俺は、今まで何のために……!」

その場で正座し、イサは頭を床につける体勢で泣き崩れた。

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