黒水晶
「テグレン様、感謝する。
ありがとう……」
ヴォルグレイトはそうつぶやくと同時に、泣きじゃくるイサに目を向ける。
ヴォルグレイトの全身には鈍い痛みが響いていた。
体中の血流が止まったのかと思うほど、体が重たく感じられる。
エーテルの禁断魔術をくらったのにここまで息の根を保てたのは、剣術で鍛(きた)え上げていたからに他ならない……。
イサに言葉を渡す時を長く持てて、幸せだと思う。
“剣術をやっていて本当によかった”
ヴォルグレイトは初めて、心の底からそう感じた。