黒水晶

「テグレン様、感謝する。

ありがとう……」

ヴォルグレイトはそうつぶやくと同時に、泣きじゃくるイサに目を向ける。

ヴォルグレイトの全身には鈍い痛みが響いていた。

体中の血流が止まったのかと思うほど、体が重たく感じられる。

エーテルの禁断魔術をくらったのにここまで息の根を保てたのは、剣術で鍛(きた)え上げていたからに他ならない……。

イサに言葉を渡す時を長く持てて、幸せだと思う。

“剣術をやっていて本当によかった”

ヴォルグレイトは初めて、心の底からそう感じた。

< 254 / 397 >

この作品をシェア

pagetop