黒水晶

白い静寂の中に、今日初めて聞いた優しい父の声がまだ残っている気がして、イサはヴォルグレイトの胸元に抱きついた。

ルナやカーティスが亡くなった時もそうだったが、人の死は、どうしてこんなにも悲しいのだろうか。

心がつぶれそうになるのを、痛感する。

何度体験しても、慣れそうにない苦しみだ。

できることなら、こんな痛みは今後一切味わいたくないと、イサは思った。


まだあたたかい、ヴォルグレイトの広い胸。

イサの倍以上筋肉がついた、たくましい腕。

それらはエーテルの魔術によって深く傷つけられたはずなのに、血は全く出ていない。

カーティスを亡くしたショックや喪失感を上回る絶望の中で、イサは、エーテルが攻撃魔術に気を配ってくれたことを察した。

エーテルは、ヴォルグレイトを攻撃する際、彼の骸(なきがら)を綺麗に見せるため、特別な魔術をほどこしていたのだ。

イサの悲しみを、最小限に抑えるために……。

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