黒水晶

マイは、弱気になっているイサの心の内を読み取った。

「……何言ってるの!?

イサ。あなたはこの国の跡を継ぐ人でしょ?

いなくなるなんてダメ。そんなの許さないから!」

「マイ……」

イサをはじめ、エーテルやテグレン、リンネ、城内で動きを止めたままの兵士達の体は、青く透き通った光に包まれる。

フェルト達の戦いで城が崩壊してもケガをしないよう、マイが皆を保護する魔法を使ったのだ。

その魔法はフェルトとレイルにもほどこされており、防御力の点ではディレットと比べ圧倒的に有利だ。


そうしている間にもディレットは次々と攻撃をしかけてきた。

ディレットが岩石で出来たヤリの雨を勢いよく降らせると、砂の城を崩すかのように、ガーデット城は跡形もなく壊れてゆく。

瓦礫(がれき)の嵐にさらされる中、マイは皆の身を守りながらイサに言った。

「この国のことや、戦争の背景にあるものとか、難しいことは何ひとつ分からないけど、私もイサの力になる!

私は皆に生き抜いてほしい。

自分の命を簡単に捨てるようなことをしてほしくない。

イサがつらいのなら、その悩みが軽くなるように、私も何とかするから!

みんなだって、きっとそう思ってるよ!

一人で背負うことないじゃん!」

「……そうだよな……。

馬鹿なこと言ってごめんな、マイ……」

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