毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 ピ、ピ、ピ……という電子音で私は目が覚めた。

 どうして? なんで戦国時代で機会音が聞こえるの?

 私がゆっくりと瞼を持ち上げると、薄暗い室内に薄い緑色のカーテンが見えた。

 カーテン?

 天井を見れば、白い平らなところに蛍光灯が目に入る。

 え? ここってもしかして……。

 私はパッと横を向いた。

 薄暗いけれど、わかる。ベッドの脇の丸椅子に座っているのが誰だか。

 壁にもたれかかって、眠っているのは聖だ。

 よれよれのワイシャツのボタンを2つほど外して、腕を組んで寝ていた。

 少し痩せた? ううん、やつれたのかな?

 一回り小さくなった気がする。

「……聖?」と擦れた声を出した。

 普通に声を出したつもりだったけれど、久々に口を開いたみたいに、喉がくっついてる感覚があった。

 聖の肩がピクッと跳ねあがると、がばっと顔が持ち上がった。

「毬亜!? 気がついたの?」

 ガシャンと丸椅子を倒しながら、聖がベッドに飛びつくように近づいた。

「ここ……病院?」

「あ。うん」と聖が生返事をかえしながら、ナースコールを押した。

「阿部さん? どうしました?」と看護師の声が聞こえてきた。
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