毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 スッと私から離れた聖が、「あー」と面倒くさそうな表情をして髪をかきあげた。

「見ちゃったんだ」なんて聖が軽々しく口にして、一人でソファに座る。

「俺を責めるの? すっかり結婚に行き遅れた年増と結婚してやるんだから。浮気ぐらいいいじゃん」

 ふん、と鼻で聖が笑う。

 嘘。なんてことを言うの?

 見間違いだよ……って否定しないで、開き直るなんて。しかも、結婚してやるんだから、浮気ぐらいいいじゃんってどういうこと?

 私は聖に背を向けると、自分の鞄を持って走り出した。

 やっと好きな人と結婚できるって思ったのに。

 友人たちに比べて、結婚するのは遅くなってしまったけど。好きな人と温かい家庭を築けるなら、年なんて関係ないって思ってたのに。

 聖がそんな人だったなんて。信じられない!

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