毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「ち、ちがいます。私は阿部 毬亜です」

 私は起き上がって、畳の上で漢字を指先が描いた。

『阿』『部』『毬』『亜』とゆっくり大きく一字、一字、書くたびに織田信長の顔を見て、理解しているかどうかを確認した。

 織田信長が、一字一字書き終わるたびに、コクンと頷いた。

 きちんと理解してくれているみたいだ。

「なら、お前の両親はキリスト教なのか?」

「いえ、違います」

「なら、なぜそのような名前を?」

 私は首を傾げると「わかりません」と答えた。

 私の名前を聞いて、キリスト教だとか、聖母マリアだとか口にしたのは、目の前にいる男が初めてだ。

 私は下を向くと布団をぎゅっと握りしめた。

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