毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 薄っぺらい白い布を身に纏って、剣道の防具みたいなのをつけているなんて。今どき、そんな人いないわ。

 私は男たちがくる方向とは逆に足を動かす。

「とりあえずこの女を連れていけばいいんだよな?」

「ああ。義元様から、大量の褒美をいただけるって話だ」

「んじゃ、捕まえるとするか」

 男たちが私を見て、にやりと笑った。

 薄汚い格好の男たちだ。白い布かと思ったけれど、泥で裾は汚れているし、襟首は黒ずんでいる。

 何日も洗濯せずに、ずっと着ているみたいだわ。

 私は不安定な土の上を必死に走り始めた。

 逃げなくちゃ。捕まっちゃいけない。

 全身から危険信号が発せられている。

 駄目。絶対に捕まってはいけない。

 これじゃあ、走りにくい。

 私は赤いヒールの靴を脱ぎ捨てると、ストッキングになった。

 小枝が足の裏にささり、痛い。けれどヒールで走るより、全然早く走れる。

< 4 / 130 >

この作品をシェア

pagetop