毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 さっきまで首に刃物があたっていたなんて。

 私は首筋に手をあてると、自分の脈を感じた。

 生きてる。私は生きてるんだ。

 衣擦れの音がして、顔をあげると布団の脇に信長が座った。

「驚かせて悪かったな。儂の弟は少し心配性なのだ。儂を想ってしたこと。許してくれるとありがたい」

「兄上、こんな女に謝るなんて……」

「信包っ! 無礼を働いたのはお前のほうだ。きちんと詫びるのが礼儀だ」

 信包が納得いかないと唇を尖らした。

「あの。私、驚きましたけど。怒ってはいませんから」

 私は、信長に口を開いた。

「お前に傷がつかなくて良かった」と、信長が私の首に手を触れた。

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