毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「必要? 兄上は、ああいうのは信じてないのに」

「ああ。儂は信じてない。が、義元の術師の実力は認めざるを得ないだろうな。『勝利の鍵』は本当に存在したのだから」

「はあ?」と不機嫌な声があがった。

 信包は私の存在を信じてないなから、信長の言葉に理解できないのだろう。

 私がこの時代以外から、来たなんて思ってないだろうし。

 今川軍が、織田信長を陥れるために送ってきたスパイかなんかと思ってるみたいだから。

「彼女を無事、元の国へ返すのには、義元の術師が必要なのだ」

「兄上は信じてるのか? この女が本当に『勝利の鍵』だと?」

「彼女は今回の戦の勝敗を知っている」

「は? 聞いたのかよ」

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