毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 私はどこに逃げればいいのか、わからないまま走り続けた。

 右に曲がり、さらに右に曲がり……ときどき左にも曲がって。

 どこにどう…進んでいるのかもわからず。

 荒くなった呼吸を整えようと、木陰に隠れて足を止めれば、また別の格好をしている男たちに見つかって。

 もう……駄目。走れない。

 苦しい。息が吸えない。肺が痛くて、呼吸が出来ないよ。

 私は大木に背中を預けると、右手を胸にあてた。

 ストッキングはあちこちが伝線してボロボロ。服も汗で、ぐっちょりしている。

 逃げても逃げても、逃げ切れてないのがわかる。

 追ってがあちこちにいて、誰もかれもが私を狙っているみたい。

合言葉のように「変な格好の女」と、誰もが私を見て口にする。

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