毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「なんでしょうか?」

 私はちらっと横目に入る信包を見やる。

 視界に入るのだ。事あるごとに、私を睨む信包の姿が。

 今も、すごい形相で私を睨みつけている。

「お前の年を聞きたい」

「29歳です」

「は? 29歳にもなってそんな……」

「信包! お前は口を閉じていろ」

「はい、兄上」

 信包が、しゅんと肩を落とした。

「そうか。儂は25歳だ。信包は16歳で、藤吉郎は22歳だ。お前の住んでいる国では、結婚はあるのか?」

「あります」

「お前はどうだ? 好いた男がいたのか?」

「どうでしょうか」

「自分のことなのに、わからないのか?」

 私は聖に言われた言葉を思い出した。

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