毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 鈍痛が頭に蘇る。

「結婚はしてません。婚約した相手がいましたが、若い女性と浮気してました」

「どんくさっ。29にもなって未婚かよ」

「信包!」

 信長に怒鳴られて、信包が肩を竦めた。

「だって兄上、29にもなって」

「国が違うのだ。儂らの考えとも、違うのだろ。浮気ぐらいどうってことないと儂は思うが?」

「ええ。信長様の時代ではそうかもしれません。が、私の時代では違います……はい、違うんです。だから、その……」

 私は下を見て、口ごもった。

 一夫多妻の時代とは違う。

 なのに、聖は私以外の女性と付き合ってた。

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