毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 年増の私と結婚してやるんだから、浮気ぐらい許せとまで言われた。

 私は我慢するべきだったの? 知らないふりを続けて、結婚をするべきだった?

 私が聖を好きなように、聖も私を好きでいてくれてるって思ってた。だけど違った。

……違ったんだね。

「お前の国では、男が他の女のところへ行くのはいけないのだな。一人の女を愛し続けるのが、普通なのか」

「そうじゃない場合もありますけど」

 私みたいに。

「さらにどんくさ!」

「信包、いい加減に……」

「あんたの国じゃ、29歳がどんなもんだか知らねえけど。俺らの国では、29歳は婆あだ」

「お前はいちいち突っかかる言い方をするな」

「信包様の言う通りです。私、どんくさいんです」

「ほらな」と信包が勝ち誇った表情をした。
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