毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「だからあんなことに……。私、死んだのかも」

 ポロリと涙が頬を零れて行く。

 その滴が、信長の手の甲に落ちた。

「ちょ……なんで、泣くんだよ。死んだって何だよ。生きてんじゃん。兄上に中にいんの、あんただろ。生きてなきゃ、話もできねえっつうの。だから生きてんだよ」

 信包が慌てたのがわかった。わけのわからない、慰め方だ。

「ここではお前は生きている」

「私の世界では私は、もう死んでいるのかも。だからここに来たのかもしれない。そんな気がする」

「戻ればわかる」

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