毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 なんで? 私は普通よ。至って、普通の女だわ。

 ただちょっと行き遅れてしまったけれど。

 行き遅れて……?

 そうだ。私、婚約してた。

『すっかり結婚に行き遅れた年増と結婚してやるんだから、浮気ぐらい別にいいじゃん』

 はっきりとした言葉が、耳の中に蘇った。

 聖に言われたんだった。その言葉がショックで、聖のマンションを飛び出して家に帰ろうとして……。

 眩しいくらいに目に飛び込んできたライトを思い出す。

 そうだ! 思い出した。

 私、車にひかれそうになって……ううん。ひかれたんだ。

 たぶん。記憶にはないけど。だって、眩しかった。車のライトが、目前に近づいてきて。

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