毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「おかえりなさいませ、信長様」

 清州城に到着すると、いろいろ人が信長の帰りを待っていた。

 誰もが信長に丁寧に挨拶し、それから私の存在に気付き、一瞥する。

 好奇な目で私の全身を舐めるように見てから、信長に「この女は?」と口にした。

 信長も一人一人に説明するのは面倒くさかったのだろう。

 質問を受けるたびに、「女だ」と返事をしていた。

 城中で、いろいろな人にあった中で一番緊張したのが、信長の正妻である濃姫だった。

「その女性は?」

 豪華絢爛な内掛けで登場した濃姫が、鋭い視線を私に向けてきた。

「女だ」と信長が答えた。

「それは見ればわかること。わたくしが聞きたいのは、どういった経緯で連れてきた女か……ということ」

 クールビューティという言葉がぴったりの女性だ。

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