毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
 それとも付き合ってるから致し方なくって感じなのかな。

 本当は若い子がいいけれど、婚約した手前、セックスぐらいしておかないと……みたいな。

 私に隠れて、若い女性と浮気してたんだから。欲求不満ではなかったはず。

 それなのに、私とも定期的にあったってことは。浮気がばれないように、私にもお情け程度にやってたってことなのかな。

 じゃあ、聖に求められてたと思って喜んでいた私は、ただの馬鹿な女だったってわけか。

 私は「ふう」と息を吐くと、じわっと熱くなった目頭を手でおさえた。

 愛されてると思ってたのにな。

 ずずっと鼻水をすする。

「どうした?」

 がさっと音がした。たぶん、信長が身体を起こしたのだろう。

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