毬亜【マリア】―信長の寵愛姫―
「ただ、気をつけろよって忠告しに来たんだ。その噂のせいで、濃姫のご機嫌が相当、悪いらしいから」
顔にかかった手ぬぐいを外すと、信包がニヤリと笑って私を見ていた。
「誤解を解く方法は何かある?」
「あながち、まるっきりの誤解ってわけじゃねえじゃん。兄上はあんたを愛してるわけだし。正室のほうから見れば、心穏やかな話題では……ないよな。たとえ愛し合ってなくとも、不安や怒りはついてくるもんだ。もしあんたに子でも授かったら、とかね。次期織田家の当主はどちらの子になるのか」
「私と信長様はそんな関係ではないわ」
「毎晩、同じ部屋で過ごしてるんだぜ? 俺はどんな関係かを知ってるけど。他人様はどう思うかな? やることをしっかりやってるって思うのが、世の中ってもんだろ」
「もうっ! 助平っ」
私は手に持っている手ぬぐいを信包に向けて投げつけた。
手ぬぐいは、信包の胸に当たると、失速して土の上に落ちた。
顔にかかった手ぬぐいを外すと、信包がニヤリと笑って私を見ていた。
「誤解を解く方法は何かある?」
「あながち、まるっきりの誤解ってわけじゃねえじゃん。兄上はあんたを愛してるわけだし。正室のほうから見れば、心穏やかな話題では……ないよな。たとえ愛し合ってなくとも、不安や怒りはついてくるもんだ。もしあんたに子でも授かったら、とかね。次期織田家の当主はどちらの子になるのか」
「私と信長様はそんな関係ではないわ」
「毎晩、同じ部屋で過ごしてるんだぜ? 俺はどんな関係かを知ってるけど。他人様はどう思うかな? やることをしっかりやってるって思うのが、世の中ってもんだろ」
「もうっ! 助平っ」
私は手に持っている手ぬぐいを信包に向けて投げつけた。
手ぬぐいは、信包の胸に当たると、失速して土の上に落ちた。